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PC-MAPPINGでの測地成果2000対応と操作概要
■ はじめに
測地成果2000とは、わが国の測量が基準とするよう定められている準拠楕円体GRS-80に基づく測地基準点成果の事で、これからのわが国の測量は、この測地成果2000の上に組み立てられる事になります。
従って、現在使っている日本測地系に基づく測量成果は、測地成果2000に基づく成果に切り替えなければなりません。
極めて簡単に言ってしまえば、地球の形状や大きさに関してこれまでのBessel定数からGRS-80定数に切り替えればよいのですが、国土地理院はこの変換作業にあたって、単に準拠楕円体の変更だけでなく、従来の基準点網が持っている歪みや、測量実施時点以降の地震等によって生じた地殻変動の影響を補正して、より信頼のおける基準点網を構築しようと努めており、そのために、地域ごとの「変換パラメーター」を公開しています。
PC-MAPPINGでも、このパラメーターを用いて変換します。

※最新の変換パラメーターファイル(現行の最新は「Ver.2.1.2」)は、以下よりダウンロードして下さい。
TKY2JGD for Windowsダウンロード | 国土地理院

ベッセル(日本測地系)GRS 80(世界測地系)
長半径6377397.155m6378137.00m-739.84m
短半径6356078.963m6356752.31m-673.35m

■ 変換パラメーターと3次メッシュ
変換パラメーターは3次メッシュの格子点上に設定されていますので、ある1点の変換は、その点を含む3次メッシュを求める、そのメッシュの4隅の変換パラメーターを引き出し、メッシュ内の位置から縦、横の「按分計算」を行って、その点の移動量を求め、新座標系での緯度、経度を決定します。
平面直角座標系のXYの場合は、XYをBessel楕円体上の緯度、経度に変換し、これを上記の通り、変換パラメーターを使ってGRS-80楕円体上の緯度・経度に変換し、この緯度・経度から今度はGRS-80楕円体定数を使って新座標のXYに戻します。

JGD2000-TokyoDatum Ver.2.1.0
MeshCodedB(sec)dL(sec)
4630358212.79799-8.13354
4630358312.79879-8.13749
4630358412.79959-8.14144
4630359212.79467-8.13426
4630359312.79544-8.13819
4630359412.79627-8.14216
4630359512.79708-8.14611

■ 守備範囲は陸部?
海上は、海上保安庁の管轄という事もあって、海上保安庁水路部が世界測地系への変換に対応し、国土地理院の守備範囲は陸上ということになります。従って、変換パラメーターが存在するのも陸部(埋め立てを含む)と港湾等、陸と隣接している部分となります。行政界線等、仮想的に海上に張り出しているものがあったら?…今後の課題となります。
PC-MAPPINGでは、「変換パラメーター」を使わず、回転楕円体の変更のみを行う座標計算もサポートしますが、この場合は「変換パラメーター」を使った場合と比べて、一般に50cmから10数m程度、青ヶ島(東京)で75m、宮古島(沖縄)で88m、石垣島、与那国島(沖縄)で250m(西表島は14m)、多良間・水納島(沖縄)では560m、大東諸島(沖縄)では640m程度の差が発生します。

■ パラメーターを探す
前述しましたように、その点を含む3次メッシュの4隅の変換パラメーターを求めて按分計算するのが大原則ですが、もし、4隅の変換パラメーターが見つからない場合は、以下のような処理がなされます。
  • まず、4隅の4点のうち3点までが見つかった場合は、その3点で按分計算を行います。
  • また、4隅の4点のうち1点もしくは2点見つかった場合は、その1点のパラメーターのみで移動量を計算します。
  • 4隅の4点のうち1点も見つからない場合は、さらにその周辺を探して、最も近くにあると思われるパラメーター1点で移動量を計算します。
    この探索はおよそ1次メッシュ1つ分くらいの「近傍」まで行われます。
  • それでも見つからなかった場合は、「変換パラメータ」を使わず、回転楕円体の変更のみを行う座標計算を行います。
    この「変換パラメーター」を使わない計算を行った場合は、それがどれに関する点(座標)なのかログファイルまたはメッセージウィンドウに記録されます。

■ 逆変換は?
日本測地系(旧)と世界測地系(新)との変換は双方向に可能です。
既存のデータが大量にある、また、後述する「図郭割り」の問題があって、すぐに新座標系に対応できない場合、世界測地系(新)で測量されたデータを日本測地系(旧)に逆変換して既存のデータに合わせて使用する事も可能です。

■ PC-MAPPINGに読み込まれたプロジェクトデータを変換する→[プロジェクト]-[変換]-[測地成果2000対応変換]
実際にPC-MAPPINGに読み込まれたデータを変換してみます。
変換の対象となるのは、
  • (ベクターの)レイヤーデータ
  • TINデータ
  • 標高メッシュデータ
  • 広域イメージ
  • 広域ベクターのレイヤーデータファイル
  • 背景ピクチャーの表示位置座標
  • 印刷設定登録の位置座標
  • (レイヤーの背景イメージ→レイヤーの図郭に連動するので処理不要)

    ですが、それぞれの特性に従って処理される内容が異なりますので注意が必要です。

(ベクターの)レイヤーデータ
全てのベクター要素の座標点に関して変換処理を行います。
ただし、図郭に関しては、図郭の「長方形」状を保持するため、左下、右上のみを変換します。
そのため、図郭付近のデータが「図郭線」に関して、僅かにアンダーシュート、オーバーシュートする可能性はあります。
もちろん、ポリゴンを閉じるために図郭上に作図された仮想線はベクター要素ですから正しく変換されます。
最終的には、後述する「図郭割り」の再構成によって解決する事となります。
TINデータ
レイヤーデータと同様に、全ての座標点が変換され、図郭に関しては、図郭の「長方形」状を保持するため、左下、右上のみを変換します。
TINデータがプロジェクトの内部ファイルになっている場合は無条件に変換されますが、外部ファイルの場合は、変換するか否かの選択が可能です。
標高メッシュデータ
図郭に関してのみ、図郭の「長方形」状を保持するため、左下、右上のみを変換します。
標高メッシュの解像度が高々10-50mであるという事と格子状に整列しているという性格上、各点ごとの変換は意味がありません。
標高メッシュデータがプロジェクトの内部ファイルになっている場合は無条件に変換されますが、外部ファイルの場合は、変換するか否かの選択が可能です。
広域イメージ
イメージのファイルタイプ(BMP・NAI・TIFF)等に関わりなく、プロジェクトに広域イメージとして登録された表示位置座標(図郭情報)の左下、右上のみを変換します。
これは、他と同様にイメージの解像度が高々数10cm程度であるという事と、図郭の「長方形」状を保持するためです。
元のイメージファイル自体には、(広域イメージとしては)必要がないので何らの操作も行いません。
NAIやTIFFファイルのイメージファイル上の座標を変換するには、別途「■ イメージファイルの変換処理」を行います(後述)。
広域ベクターのレイヤーデータファイル
広域ベクターはその性格上、レイヤーファイルの変換となります。
変換するか否かの選択が可能で、変換処理自体は、通常のレイヤーデータの変換と同じになります。
背景ピクチャーの表示位置座標
背景ピクチャーとして登録された表示位置座標(図郭情報)の左下、右上のみを変換します。
背景ピクチャーが内部データでなくても、元の背景ピクチャーファイル自体には、必要がないので何らの操作も行いません。
印刷設定登録の位置座標
印刷時の領域サイズ、縮尺を保持するため、中心位置のみを変換します。従って、印刷枠が平行移動する事になります。

■ 複数のプロジェクトファイル、レイヤーデータファイル、標高メッシュファイル、TINデータファイル、イメージデータファイル(NAI・TIFF)をまとめて変換する(一括、連続変換)→[システム]-[測地成果変換]-[測地成果変換]-[測地成果2000対応変換(連続一括処理)]

■ PC-MAPPINGに読み込まれたイメージデータを変換する(NAI・TIFファイル)
イメージデータに関しては、これまで述べてきたように、その解像度に対して変換の歪みは無視できますので、「画像のプロパティ」などで表示される座標系設定のダイアログボックス内で「日本測地系<>世界測地系」の変換を実行するだけでOKです。

↓↑

■ 標高メッシュデータを変換する
上述の「一括、連続変換」を使用して変換します。

■ 変換されないデータ
  • ペーパー座標系のデータ
  • 座標系情報に世界測地系である(変換済み)のフラグがあるデータは、変換されずにスキップされます。
    従って、例えば、複数のプロジェクトで同一のレイヤーファイル群を広域ベクターとして登録していても2回以上にわたって不正な変換をする事はありません。
    逆に日本測地系フラグがあるデータを日本測地系から世界測地系への変換もスキップされます。

■ PC-MAPPINGに読み込まれたデータベース上の座標データを変換する→[データベース]-[編集]-[座標データ]-[座標データの変換(測地成果2000)]
データベースのメニューとして、経緯度・直角座標の相互変換機能があります。
これと、類似する形で、データベース上の座標データを日本測地系から世界測地系へ、世界測地系から日本測地系へ相互に変換する機能が実装されます。

■ 変換するにあたって注意点
バックアップは必ず「自力」で取っておく、ということ
全てが、内部データとして格納されているプロジェクトなら、これを変換し、別なファイルに保存する、という「すっきり」とした方法が取れます。
しかし、PC-MAPPINGでは他にも、プロジェクトファイルと同じ、あるいは異なるフォルダーにあるレイヤーデータファイルや背景ピクチャー、広域ベクター等をプロジェクト要素として登録し、これらをまとめて読み出す機能があります。
そのため、あらゆるタイプのプロジェクト構成に対して、「すっきり」とした形でバックアップファイル群をPC-MAPPING側で自動的に生成する事は極めて困難です。
もちろん、「自動バックアップ」のオプションはあります。
そして、元のファイル名に"-bak"を付け足したファイル名で元のファイルを確保する事はできます。
しかし、何らかの都合があって、これらのバックアップファイルを使用したい場合には、元のファイル名に戻す、という厄介な作業が発生します。
こういった作業を肩代わりするツールもPC-MAPPINGには用意されますが、その場合変換済みのファイルをどうするか、いずれにせよ、悩ましい問題を抱え込まなければなりません。
もう1つのバックアップオプションとしては、バックアップ専用のフォルダを指定し、そのフォルダーにプロジェクト単位でバックアップファイル群を保全する事もできます(一括、連続変換の場合のみ)。
この場合は元のファイル名がそのまま残り、プロジェクト毎にサブフォルダーに分類されますから、上述の場合より復元処理は少しは容易になるでしょう。
けれど、今度は、ベクターレイヤーファイルを複数のプロジェクトで使用している場合、最初に変換したプロジェクトに関してのみバックアップファイルが作成されるだけですから、どのようなデータ構成をしているかあらかじめ把握しておく事が肝要です。
また、別のアプローチとして、「変換したデータを指定のフォルダーに保存する」オプションもあります(一括、連続変換の場合のみ)。
この場合は、そのフォルダーにプロジェクト単位で新しく変換されたファイル群が生成されます。
この場合は、元の変換前ファイルには何の変更もありませんから、最も安全な方法ともいえます。しかし、ベクターレイヤーファイルを複数のプロジェクトで使用している場合は、その分ダブって変換され、同じ内容のレイヤーデータが複数のフォルダーに分かれてダブって作成される事になりますので注意が必要です。
いずれにせよ、バックアップは、時には、「両刃の剣」になります。
例えば、膨大な広域ベクターファイル群がある場合等、バックアップを取る事によって、ディスクを使いきって処理自体が中断してしまうかもしれません。
やはり、変換に際しては、そのデータ構成を検討し、他のメディアやディスクに「手動」で「すっきり」としたバックアップを取っておく事が安心です。

バックアップファイルの復元→[システム]-[測地成果変換]-[測地成果変換]-[測地成果2000対応変換 バックアップファイルのリネーム]
バックアップされたファイルを元のファイル名に戻すツールメニューが用意されます。
ただし、これはファイル名を変更する機能のみで、変更後のファイル名が既に同一フォルダーに存在する場合は変更できません。

■ 旧座標→新座標→旧座標の変換を実行した場合
データとして有効な解像度の範囲では全く問題なく戻ってきます。
ただし、図郭の座標に関しては、(ダイアログ表示の見易さを考慮して)少数3-4桁で丸めますので、丸め分の誤差が累積する可能性はありますので、安易な使用は避けるべきでしょう。

■ 図郭割り
本来GISは、図郭、図葉、図面といった概念を超えて、種々のデータをその座標をキイとしてシームレスに扱うものです。
PC-MAPPINGでも、他のデータとのやり取りの際やおよそのデータの存在範囲を推定するための便宜的なものとして「図郭」という概念は一応ありますが、図郭外にもデータを保持する事が可能で、それほど本質的なものではありません。
従って、「図郭割り」は地図(図面)を管理する上での、極めて人為的な問題となります。
測地成果2000への切り替え過程で「図郭割り」をどのタイミングで、どのように新座標に移行するか、地図を管理する上では悩ましい問題です。
繰り返しますが、端数の付いた座標を図郭とするデータを並べてシームレスに扱う事自体PC-MAPPINGでは何らの問題もありません。
その上で、端数のない、新「図郭割り」単位で新しくデータを切り出して(例えば)DMデータとしてエクスポートする事とも可能でしょう。
注意しなければならないのは、図郭で分断されるポリゴンを閉じるために図郭上に仮想線を発生させている場合は、この仮想線がもはや図郭上でなくなってしまう事です。
そして、新図郭上には、まだ仮想線が発生していない事になります。
この場合、新図郭上に仮想線を発生させてポリゴンを分割し、旧図郭上の仮想線で分断されたポリゴンを併合する必要があります。

■ 実際の測地成果2000変換にあたって
最初に述べましたように、国土地理院より提供される変換パラメーターが必要です。
使用地域があらかじめ限定される場合を除いて、全国分が記述されているパラメーターファイルTKY2JGD.parの使用を強く推奨いたします。
PC-MAPPINGではパラメーターの地域を限定しても変換速度にあまり影響ありません。
また、このパラメーターファイルはpcm.exeのあるフォルダーに置いておく事をお勧めします
他の場所のファイルを参照する事もできますが、規定値はpcm.exeのあるフォルダーのTKY2JGD.parとなっています。
また、変換パラメーターは今後、新しく追加・更新されるものが国土地理院より提供されるかもしれません。この場合は新しいものを使うべきでしょう。